
2. 唾液分泌低下による口腔内トラブルの発生メカニズム
シェーグレン症候群では唾液腺が障害され、唾液の分泌量が著しく減少します。本来、唾液は食べかすの洗浄や虫歯菌の増殖抑制、口腔内の酸性化防止など多くの役割を担っています。しかし唾液分泌が低下すると、これらの重要な機能が損なわれ、口腔内でさまざまなトラブルが発生しやすくなります。う蝕や歯周病などのリスクが高まるため、唾液分泌の維持がとても重要です。以下では、唾液分泌低下による具体的なリスクの発生メカニズムについて詳しく解説します。
2.1. 食べかすが停滞しやすい
唾液には食事の際に口腔内から食べかすを洗い流す働きがあります。分泌量が減ると、この自浄作用が低下し、細かい食べかすが歯や歯茎の間に残りやすくなります。食べかすが長時間残ることで、虫歯菌や歯周病菌が増殖する土壌ができてしまいます。その結果、う蝕や歯周病のリスクが増大します。日々のセルフケアだけでなく、定期的な専門的クリーニングも重要となる理由です。
・唾液の自浄作用低下で食べかすが残留しやすい
・虫歯菌や歯周病菌の増殖環境が整う
・う蝕や歯周病の発症リスクが上がる
・セルフケアとプロケアの併用が必要
2.2. 虫歯菌の増殖促進
唾液には抗菌作用があり、虫歯菌や歯周病菌の増殖を抑える役割を持っています。しかし、唾液分泌が低下するとこの抗菌力が弱まり、虫歯菌が繁殖しやすくなります。特にシェーグレン症候群の患者さんでは、虫歯や歯周病の発症率が健常者より高いことが明らかになっています。そのため、通常よりも早期発見・予防が求められる状況になります。
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| — | — |
| 唾液の抗菌作用 | 虫歯菌や歯周病菌の増殖抑制 |
| 唾液分泌低下の影響 | 抗菌力が低下し、細菌が増殖しやすくなる |
| シェーグレン症候群患者のリスク | 虫歯や歯周病の発症率が高い |
2.3. 口腔内の酸性化
唾液は飲食後の口腔内を中和し、酸性状態から素早く回復させる働きがあります。分泌が減少するとこの中和作用が遅れ、口腔内が酸性のまま長時間保たれてしまいます。酸性環境下では歯のエナメル質が溶けやすくなり、虫歯が進行しやすくなります。このような背景から、シェーグレン症候群の患者さんは特にう蝕や歯周病の予防が重要だといえます。
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| — | — |
| 唾液の中和作用 | 食後の酸性環境を中和し、歯を保護 |
| 分泌低下時の影響 | 酸性環境が長引き、エナメル質の脱灰が進行 |
| 必要な対策 | 口腔ケアの強化や食生活の工夫が不可欠 |



